エピローグ:天空の流星
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 気づけば、陽は既に西へ傾いていた。手にあるコップの中のレモンスカッシュはすっかり温くなり、炭酸も飛んでいる。
 全てを語り終えた彼女は、穏やかな笑みを浮かべたままだった。
「長話をしてごめんなさい」
 いいえ、こちらが訊いた事ですから、と返しながら、彼女にコップを渡す。辛い事を思い出させたと詫びても、彼女は静かに首を横に振り、思い出に涙を落とす事もしなかった。
 コップの中身を地面にこぼし、サンドイッチの残るバスケットを閉じても、立ち上がる気配の無い彼女に訊いてみた。まだ帰らないのですか、と。すると。
「もう少し、もう少しだけ、待ってみようと思います」
 緑の髪が風に吹かれて、草のようになびく。
「なんだか今日は、そんな気分なんです」
 これ以上邪魔をしてはいけない。そんな予感がして、腰を上げると、彼女に別れを告げて歩き出した。
 世界を救ったなどと途方も無い話を、そう簡単に信じられるものでは無い。
 だが。
 ふたりが交わした約束が果たされる日が来たら、良いと思う。
 そう心で願って、赤い天空を見上げた、その時。

 空の色より更に鮮やかな赤い流星がひとつ、尾をひいて流れ落ちていった。

『エターナリア』 完