『負け犬はワルツを上手く踊れない』

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「大丈夫ですか、蓮子様!?」
リーティアの慌てふためいた声に、平気、と返そうとしたが、
「あー…痛たたたぁ…」
腰を打って、それしか出てこなかった。
昔一回ギックリ腰やらかしたから、腰は弱いのよ……。
よつんばいになってさすっていると、ふと、腰のあたりがポワポワ温かくなった。痛みが、ひいていく。
見ると、リーティアが隣に膝をついて、アタシの腰に手をかざしていた。その手から、温かい光がもれている。
これはもしや。
「回復魔法?」
「はい。
あまり熟練したものではありませんが、私が蓮子様のお役に立てるのは、これくらいしかありませんので」
いや、十分だよ……。
気持ち良さに、他の事を忘れそうになったところで、はたと思い出す。
「そうだ! アタシはいいから、フェルナンドと長谷川さんを!」
「もう終わった」
当のフェルナンドの声がした。見れば、随分とケロリとしている。傷はふさがったのだろう。流れて服にべっとりついた血は生々しいが。
「美里様の事も、ご心配なさらないでください」
リーティアの視線を追えば、長谷川さんは、マルチナに支えられて立ち上がるとこだった。
「自国の戦巫女様を癒すのは、その国の王女の役目です」
ふぅん。
ただのイヤミな女かと思ったけど、ちゃんと他人を思いやる気持ちも持ち合わせてたのね、マルチナも。
「そういえば、助けてもらっちゃったね」
アタシはフェルナンドに頭を下げた。
「ごめんね」
途端に、フェルナンドが眉間にシワを寄せる。
「……何よ」
「いや、お前から、そんなしおらしい言葉を聞けるとは、思っていなかったからな」
こ、こいつ。たまに人が下手に出てやれば、言いたい放題。
ブン殴ってやろうかと思って、拳を握りしめたところで。
「矢田さん」
背後から、長谷川さんに声をかけられた。
「見事でした。わたしはあなたを少し、見くびっていたようです」
「は、はあ」
握手を求められる。おっかなびっくり差し出した手は、今度は、ぎゅむっと握りしめられることはなかった。
「でも、来年のペナントレースは、タイガースが優勝をいただきます」
長谷川さんは、笑顔で付け足した。
「……はあ」

それにしても。

「デア・セドル……か」

アタシは、空を睨んで、ハピ夫が遺したその名をつぶやく。
恐らく、アタシ達の、最大の敵になるだろう相手は。

「……ヘンな名前ぇ……」

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