『負け犬はワルツを上手く踊れない』

3―6



燃え盛る家の中に飛び込んだアタシは、盾で炎をはじきながら、取り残されているはずの子供を探した。
やがて、ごうごうと火の燃える音に混じって、泣き声が耳に届く。
声の方向へ駆けて行くと、いた!
泣きじゃくっている女の子。
「もう大丈夫、大丈夫だからね!」
走り寄って、盾で炎から守り、声をかけてやる。
だがしかし。
どおん!という大きな音に、来た道を振り返ったアタシは、愕然とした。
そこには、柱か何かだろう。大きな木材が倒れてきて、退路を塞いでしまっていた。
しがみついてくるこの子を守りながら、このデカブツをブッ飛ばす余裕は、さすがに、無い。
立ち尽くすばかりのアタシたちのもとへ、煙が流れて来た。目に入って痛いし、喉に入って苦しい。ゴホゴホせきこむ。
盾で炎を防ぐことはできても、煙までは防げない。
このままじゃ、一酸化炭素中毒でオダブツになってしまう。
かなりヤバイぞ。パニックになりかけた時だった。

「蓮子!」

また空耳の幻を見たのかと思った。アイツが、アタシの名前をまともに呼ぶなんて、ありえないと思ったから。
しかし、目の前の燃える木材ブッた斬って、やってきたのは、間違いなく。

フェルナンド!

炎避けに水をかぶって来たんだろう、頭っからずぶ濡れの奴は、アタシの腕をつかんで怒鳴りつけた。
「まったく、いい歳をして、後先考えずに行動するな、このレンコン女!」
……やっぱり名前を呼ばれたのは気のせいかもしれない。
あんたこそ、無茶なことしてるじゃない、と反論しようと口を開きかけて、フェルナンドに遮られる。
「文句があるなら後にしろ。とにかく、逃げるぞ」
そんなアタシたちの背後で、めきめきめき、っと、不吉な音がした。
多分、振り向くより先に、また別の柱が倒れてくるだろう。
フェルナンドがアタシを引き寄せた。アタシは女の子を腕の中に抱きしめる。

今度こそ、本気でヤバイ。

どうにか、ならないのか、アタシの力で!?

強く念じた。
すると、右手の盾が光に拡散する。
炎に包まれた柱が倒れてくる光景と、光が、アタシたちを包むのが、やけにゆっくり見えた。

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