『負け犬はワルツを上手く踊れない』

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「やっほう! たっだいま〜、マイスゥイートファミリー!」

……あ、なんかデジャ・ヴ。
ていうか、スゥイートファミリーなんて、アタシの戦巫女の翻訳機能がついに壊れたかと思ったよ。
扉を盛大に開けて、ズカズカ入って来たのは、ぼっさぼさの髪に無精ヒゲ生やして、ズタ袋みたいな外套羽織った、オッサン。
アタシや翔平君は、誰じゃ!?と固まったが、
「……兄上……」
フェルナンドがおもっきし眉間にシワ寄せてうなったのと、
「おう、フォレストお帰り〜。今回は早かったなあ」
フォル王様がノンキに手を挙げたので、わかった。

放蕩息子な第1王子って、コイツか!

そういや青い髪に、目は金色。
フォルティア王家、キョーレツ遺伝だ。
フォレスト王子は、食卓に揃ったメンツを見渡すと、うきうきとセルマ王女のもとへ近付いて、手を取った。
「おやおや、セルマ王女までおいでとは。相変わらず、花のようにお美しい」
「ありがとうございます、フォレスト王子。貴方も相変わらずで」
王女様は、さらりとかわした。
すごい。慣れてる。
かわされる方も慣れっこなんだろう、フォレスト王子は笑顔のまま、家族におみやげを配り始めた。
「はい父上、ステア国産の地酒。母上とリーティアには、ネーデブルグの遺跡で発掘した装飾品〜」
「それは発掘ではなく盗掘と言うのではないですか」
リーティアのツッコミ効かず。
「フェルナンドには、いかにもいわくありそうな、古代の金貨〜」
「要りません……」
フェルナンドの眉間のシワが、いっそう深くなるのを見た。
アタシはリーティアにそっと耳打ちする。
「あのさ、フォレスト王子とフェルナンドって、仲悪いの?」
「いいえ、決してそういう訳では無いのです。
ただ、フォーレ兄様はあのように奔放な方ですし、フェル兄様は兄様で、真面目な方ですから、フォーレ兄様のノリに、ついていけない時が、あるみたいですね」
……なるほど納得。
「フォレスト殿、今回は、どこまで行っていたのですか」
「ん〜? ちょっと三国を周って、北の地の遺跡までね」
「北の地とは、魔族の領域でしょう。危険にも程が過ぎます、兄上!」
「まあまあ、こうして無事に帰って来たんだから、気にしない気にしな〜い」
フォレスト王子は、のらりくらりと弟のお説教をかわすと、珍しそうに、食卓に並んだ料理を眺める。
「しかしいやあ、僕がいない間に、おいしそうな物を食べてるなあ。誰が作ったの?」
「聞いて驚いてくださいフォーレ兄様。戦巫女様の、蓮子様ですよ」
リーティアの言葉に、フォレスト王子が、ぐりん、と凄い勢いで首をこちらに向けた。
しばし、何か言いたげに口をパクパクさせてたので、この人もまた、レンコンだとか、年増な戦巫女だとか、言い放つんじゃないかと思ったが。
フォレスト王子の台詞は、アタシの予想の、右後方斜め上を行った。

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